任意監査と法定監査の違いとは? 行う目的とメリット・デメリット

監査とは、会社の経営が法律や会社規定に則って健全に行われているかどうかを、第三者が確認し報告することです。監査には「任意監査」と「法定監査」の2つがあり、今回の記事では任意監査について取り上げて説明します。

法定監査との違いをはじめ、任意監査を実施するメリットやケース、実施の流れ等を紹介します。任意監査を行いたいけどはじめてで何から準備したら良いのかわからない、ほかの監査との違いがわからない、といった経営者や担当者の方は、是非今回の記事を参考にしてください。

任意監査と法定監査の違いは「法による義務があるか否か」

法定監査とは、法律によって義務として定められている監査です。上場企業や大会社(資本金が5億円以上または負債額が200億円以上の会社)は、毎年公認会計士や監査法人による監査を受けなければなりません。

一方で、任意監査とは法定監査以外の監査を指します。任意監査は経営者や株主の判断で公認会計士や監査法人に依頼して実施されるもので、法的に義務付けられてはいません。

つまり「法による義務があるか否か」が任意監査と法定監査の大きな違いです。

任意監査は「法定監査以外の監査」|まずは2種類の法定監査を押さえよう

1.金融商品取引法に則った監査

法定監査のひとつに「金融商品取引法に則った監査」があります。金融商品取引法とは、有価証券の発行や金融商品の売買等の金融取引の公正化・透明化を図り、利用者の保護と安心して取引ができる環境づくりを目指して作られた法律です。

金融商品取引法の193条では、金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社と、それ以外の政令で定める企業が作成した財務諸表は、独立した公認会計士や監査法人の監査証明を受けなければならない、と決められています。これが、金融商品取引法に則った監査です。

2.会社法に則った監査

「会社法に則った監査」は会社法に基づいて実施が必須とされている法定監査です。会社法436条では、大会社は、会社法で規定されている計算書類やその附属明細書が適正に作成されているかどうか、公認会計士や監査法人からの監査を受けなければならない、と決められています。

計算書類とは、貸借対照表や損益計算書を含む、会社の財政状況・経営状況を確認できる書類です。株主総会での提出が求められ、株主は計算書類を見て企業を評価します。したがって、公認会計士や監査法人が計算書類を監査することで、株主に対して財政状況や経営状況の正確性や信頼性を保証することができるのです。

任意監査とは? 意味合いと種類を解説

任意監査とは会社が自社の任意で行うもの

任意監査は法定監査と違って、会社や株主が自主的な判断で行う監査を言います。監査が必須の上場企業や大会社以外の会社は、任意監査を受けるかどうかを自由に選ぶことができます。

実際に任意監査が必要になるケースは、企業が上場の準備をする時や会社売買を実施する時。その他、投資判断のために投資家から要請された時、取引会社や親会社に要請された時等があり、その目的は状況や場合によって様々です。

任意監査には主に内部監査と外部監査の2つの方法がある

内部監査は内部に監査人を立てて行う方法

任意監査の方法は2つあり、そのひとつが社内で監査人を選び実施する内部監査です。会社法によって、大企業は内部監査が必須となっていますが、それ以外の企業は任意で監査を行います。

内部監査には以下の3つの種類があります。

  • 部門監査
  • テーマ別監査
  • 経営監査

部門監査とは、社内の各部門の規定や使われているマニュアルが、正しく整備され活用されているかを確認し、評価する監査です。
テーマ別監査とは、自由に監査のテーマを設定し、そのテーマに基づいた内容で行われる監査を言います。

最後に経営監査とは、企業の内部統制やリスクマネジメント、コーポレート・ガバナンスの状況に関して監査を行います。株主や従業員、消費者といった利害関係者に対する経営責任が果たされているかを判断し、改善提案や改善の協力を行うために実施される監査のことです。

外部監査は会社外部の法人等に依頼して行う方法

外部監査とは、会社から独立した外部の個人や組織を監査人に立てて監査を行う方法です。監査人は一般的に公認会計士や監査法人に依頼します。

大企業は会社法に基づいて、外部監査の実施が義務付けられていますが、中小企業は必ずしも外部監査を行う必要はありません。それでも実施する企業が多くあるのが現状です。

その理由は、株主や投資家に対して企業の会計情報や経営状況が健全かどうかを証明できるからです。株主や投資家は、財務諸表を見るだけでは会社の経営が適切になされているかどうかがわからず、株式売買や投資をすべきかの判断がつきません。そこで、外部監査を行い、監査人が企業の健全性を保証することで、株主や投資家に安心感を与えることができます。

任意監査には3つの目的がある

1.自社の財務諸表の社外からの信頼を高めるため

任意監査には、自社の財務諸表に対して社外からの信頼を高めるという目的があります。任意監査を実施すると、公認会計士や監査法人といった独立した第三者の専門家が、客観的な視点で財務諸表の健全性を保証することになります。

株主や投資家は自身で財務諸表の適正性を判断することはほとんどできないので、任意監査を行うことで、財務諸表を適切な意思決定の材料として活用してもらうことができるのです。このように、社外に対して財務諸表を保証するための監査は、任意監査だけでなく法定監査でも同じように行われています。

2.より有効な内部統制を図るため

任意監査の実施にあたって、監査人は監査手続きの内容を決定するために、監査を受ける会社の内部統制を評価する必要があります。内部統制とは、企業が目的を達成するために必要なルールや仕組みを整備して適切に運用することです。

監査人が会社の内部統制を評価する際に、場合によっては監査人が内部統制の改善のために指導を行うことがあります。これにより、会社の仕組みやルールの不備が表面化するため、より効果的な内部統制を作り上げることができるのです。

3.経理部門の能力向上に役立てるため

監査を受ける会社は、財務会計ではなく企業会計での会計処理が必要になります。財務会計と企業会計は報告する対象に違いがあり、財務会計は国や地方公共団体に対して税務申告をするための会計です。一方、企業会計は株主や投資家、または社内の利害関係者等に対して、財務状況や経営状況を示すための会計です。

任意監査を受ける際は、企業会計での処理をしなければならないので、経理部門の能力向上という効果が見込めます。

任意監査実施で得られるメリットは社外からの信用が得られること

任意監査を実施するメリットは、任意監査の目的でも述べたように、社外からの信用が得られることです。第三者に財務諸表の適正性・透明性を担保してもらえ、株主や投資家だけでなく、金融機関や取引先等にも信頼性の高さを伝えることができます。

任意監査を受けることで、投資家に対しては、財務諸表を意思決定の材料に、投資を行うかどうかの判断をしてもらうことができます。金融機関に対しては、融資を行うかどうかの判断材料になり、また融資を行う場合の融資額や利率等を決定する資料にもなるでしょう。取引先には、支払サイトや支払保証金等の取引の条件を決める際に参考資料として活用してもらうことができます。

任意監査を行うための手間やコストがデメリット

社外からの信用を得られるという大きなメリットがある一方で、手間やコストがかかるというデメリットもあります。

企業が任意監査を実施するには、必要書類を準備しなければなりません。特にはじめて監査を行う会社だと、どのような資料を準備すれば良いのかがわからず、時間がかかってしまう場合がほとんどです。さらに、公認会計士や監査法人といった監査人も、監査前に会社の状況を把握するために時間を要します。

また、公認会計士や監査法人に監査人を依頼する場合は、報酬も準備しなければならず、金銭的な負担もかかります。

一般的に任意監査を取り入れるケースと、行うと効果的な企業や団体等

任意監査を業務に取り入れるケースは様々

任意監査が行われるケースは様々ですが、ここでは具体的な例を挙げて紹介していきます。まず、親会社からの要請があった際です。対象の企業が大会社ではなく監査が必要ない場合も、グループ会社の管理や統制を強化する目的で行われることがあります。
また、将来的に上場を見据えている場合や、経営管理を強化する場合も任意監査が実施されます。

ほかにも、会社の停滞期に経営者が会社の問題を把握するためにも行われることも。会計や内部統制の専門家である公認会計士や監査法人の意見を取り入れて、会社状況をより良くするためです。

会社の社長が交代する際に、会社の経営状況や課題を知るために実施するパターンや、銀行でお金を借りる際に銀行から任意監査を求められる場合もあります。このように、任意監査を実施するケースは様々です。

任意監査を行うことが効果的に働くと考えられる企業や団体等

大会社でなければ監査を行うことは必須ではありませんが、それでも任意監査をした方が効果的に働く場合もあります。それは、先に紹介したような、社外に対する信頼性を高めたい際や、会社の問題点を把握したい際です。ここで、任意監査を行うと良いとされている企業や団体を紹介します。

  • 証券取引所に上場していない非上場株式会社
  • 合名会社、合資会社、合同会社等の持分会社
  • 公益法人
  • 一般社団法人や一般財団法人
  • NPO法人(特定非営利活動法人)
  • 医療法人
  • 社会福祉法人
  • 宗教法人
  • 農業協同組合や水産業協同組合

任意監査の進め方を種類別に解説

外部監査の場合

外部監査を実施する場合は、以下のような手順で進めていきます。

  1. 監査人との契約
  2. 監査計画の立案
  3. 期中監査
  4. 実査
  5. 期末監査

まずは公認会計士や監査法人に問い合わせて契約を結び、監査人と監査計画を立て、監査が実施できるかどうかを確認します。監査計画が終われば、期中監査に移り、会社は監査に必要な試算表や仕訳票、請求書、見積書、稟議書、取締役会議事録等の書類を監査人に提出します。

次に行うのが、現金や小切手、有価証券があるかどうかを監査人が確認する実査です。現金の金額に1円でもズレが生じた場合は、管理体制が整っていないとみなされるので、事前に準備しておきましょう。

最後に期末監査を実施して、実査での内容が正しいかどうかを監査人が最終確認します。

内部監査の場合

内部監査を実施する場合は以下のように進めていきます。

  1. 監査計画の立案
  2. 事前調査
  3. 本調査
  4. 監査結果の報告
  5. 改善策の提案

まず、社内の規定に則って監査計画を立てます。この時に内部の監査人が選ばれ任命されます。次に監査対象となる部門に通知し、事前調査を行います。1か月前には通知するのが理想で、対象部門に必要書類を準備してもらわなければなりません。

事前調査が終われば、監査計画に基づいて本調査に入ります。不正がなされていないか、業務マニュアルが正しく運用されているか、等が一般的にチェックされる点です。

監査が終了次第、結果を報告書にまとめ、経営者や対象部門に提出します。ここで改善点が見つかった場合は、監査人が対象部門に対して改善方法を提案し、今後の業務や組織運営に役立ててもらいます。

【まとめ】任意監査と法定監査の違いや行う目的を押さえよう

今回は、任意監査の法定監査との違いや、任意監査の種類、実施する目的等を紹介しました。

任意監査は法定監査と違い、法によって義務付けられておらず、実施するかを自由に決められる監査ですが、実際には企業の成長や信頼獲得のために実施する企業が多くあります。銀行から借入を行う際や上場準備をする際、会社の経営上の問題点を把握したい際等、様々なケースで任意監査が実施され、多くの場面で効果を発揮します。

会社の健全な経営のためにも、任意監査の実施を是非検討してみてください。

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